FMO? 鋼鉄の巨人が寝ている。 同じく鋼鉄で出来た広い広い部屋で鋼鉄の巨人が寝ている。 鋼鉄のラックにかけられた巨人は身動きせずに立ち尽くすように寝ている。 『システムチェック・・・オールグリーン。問題ないぞ。』 鋼鉄の巨人の内から声が聞こえる。 「はい、こちらでも確認しています。御館様続けてどうぞ。」 部屋の隅のセットアップコンソールをチェックしつつ女が応答する。 『SDMSも問題なさそうだ。網膜投射ディスプレイは・・・うむ、OK問題ないな。』 「こちらも続けて確認しました。こちらでもエラーは出てませんね。良かったです。」 コンソールの前でキーを叩きながら女は軽く息をついた。 『まぁ、アレだ。お前も変わったこと考えるよなぁ・・・まぁ、俺は楽しいからいいが。』 男はそう応えるとなにやら懐からごそごそ取り出し口に咥えおもむろにライターで火をつける。 「これが完成すればB型ともS型ともまたアプローチの違う・・・って、御館様!機体内で煙草は吸わないでくださいとアレほど!?」 『えー、いーじゃん、気にすんなよう(´з`)y-〜』 すぱ〜と景気良く煙草を吹かす男、だが・・・ 「整備をするのは私達なんですよ!?あーもーこの前やっとヤニの匂いとったのに!?」 『まぁ、そうガナるなよう。老けるぜ?』 女は怒鳴り散らすが男はドコ吹く風である。 『で?後はなんだっけか?えーと・・・メグシステムっつったっけ?』 「はぁ・・・もういいです・・・(ノД`)MEG-SYSTEMですね?フルネームはMode shift of Emergency is more Generator output-SYSTEM。簡単に言えば緊急時にジェネレーター出力を高めるシステムですね。正確には今回組み込んだその他諸々の一つではありますが、それが基幹システムになっています。」 がっくりうな垂れたかと思うと急にシャッキリ応え始める女。 「機能について事前に仕様書を見てもらおうとエイミーに届けさせたはずなんですけど・・・?」 『あー?エイミー?なんか書類は持ってきたけど同時に紅茶ぶっかけられてぐしょぐしょに読めなくなったアレの事か?』 「エイミー・・・・orz」 またもがっくりうな垂れる女。しかし拳を握り締めキッと立ち上がりキリリとした顔に戻る。 「・・・今回搭載したMEG-SYSTEMを基幹とした新システムは通常時と緊急時を切り替えを明確化させてみました。」 『続けて続けて』 「今回御館様のWAPに搭載した新型のジェネレータにより従来より出力が増強し余剰パワーが生まれました。普通なら武装強化に出力を当てるのが普通ですが、それではあまりに美学が無さ過ぎます。新型のジェネレータちゃんが泣いてしまいます!そこでですね?余剰分を増加装甲に充て機体の耐久度を上げました。御館様のWAPの外装が変わっているのはその為です。しかしそれで終わってしまっては「だったら初めから高耐久高出力のWAP使えばいいじゃない?」と言う話なのでさらに一手間。その増加装甲はMEG-SYSTEMと連動しパージする事が可能です。装甲をパージする事により以前の機体に戻る訳ですが、先ほどの新型ジェネレータを搭載したため出力に余剰分が生まれます。この余剰パワーを機体内の特殊バイパス回路に送り平時より機体の性能を一時的に引き上げさせる事ができます。具体的な数値で言えば移動速度が1.7倍 追従性は2倍近くまで跳ね上がりますね。つまり御館様のブリザイアがMEG-SYSTEM時には移動速度が通常歩行で102km/h、RD時には204km/hにまで出る事になり、また各部の追従性も上がる為直接的なパワーはもちろんですが、反応速度も上がり各関節部の動きも速やかになるため何時もよりも軽やかに、即座に行動可能になるでしょう。解りましたか?』 『・・・(-_-)zzz』 「御館様ッ!?」 『ね、ネテナイヨ、ネテナイヨ?(゜Д゜≡゜Д゜)?』 「本当に?」 『うむ、まぁ、理解はしたが・・・。カタログスペック的には素晴らしいが常人の反応速度で操作できるのか?その状態で。ピーキーすぎねぇ?』 カクカクしながら質問する男に対し、女はニコリと笑い応える。 「まぁ、御館様が常人かどうかは置いておきますが・・・その為のSDMSですわ」 『オイコラ!常人だっつの、俺様は!?(ノД`) えーとSDMSはさぶだいれくともーしょんしすてむ・・・だったよな?』 「えぇ、人の動きを補助的に機体に反応させるシステムです。S型ほどフィードバックさせる事は出来ませんが外科手術や後遺症などの問題は発生しないのが魅力ですね。でも今現在ではプロセスに問題が有って実装はされては居ませんが・・・。まぁ、SDMSの弱点はそもそもですね・・・」 『いや、そこ説明するとまた長くなりそうだから結果だけ言ってくれ。頼むから。』 「あぅ・・・ご、ごほん。つまりSDMSを腕部分だけ搭載しそれにより上半身を簡易的にフィードバックさせてるだけなので馬鹿でかい制御ユニットは要らずコンパクトにまとめて見ましたって事で・・・えーと、座席の後ろ側に腕を覆うくらいの長さの手袋があると思うんでそれを装着してください。」 『これか・・・うむむ?ぴったりフィットォ!さすがダネ、しっくりくるネ。』 「えっと、装着して頂けましたら次は操縦桿を握らずにちょっと腕を動かしてみてください。あんまり派手に動かすと機体が破損する恐れがあるのでお静かにお願いしますね?」 『了解した・・・えーと、こうかな?』 男が腕を前に突き出し手を広げ閉じたりすると、鋼鉄の巨人の腕もまた前に動き手を広げたり閉じたりする。 『おぉ、これは面白い!そして楽だ!なんで皆これ使わないんだろうか(゜Д゜≡゜Д゜)?』 「それはSDMSのフィードバックが実用に耐えるほどの速度で行う事が不可能な為です。御館様のブリザイアのコアユニットは正直私が手がけた特殊なモノですがそれでも両腕だけで制御が一杯一杯なんです。更に機体追従性の問題もあり通常人間が手を動かす間隔で動かしても機体側の処理が追いつかない為どうしても行動が遅れてしまうため使われていない。まぁ、これがさっき説明しようとしたSDMSの最大の弱点な訳ですが・・・」 『ヤベェ、結局説明させちまった(ノД`)』 「何か言いました?」 女がちょっとムッとした顔を向ける。 『イッテナイヨ!俺様ナニモイッテナイ!!』 「・・・まぁ、説明はこの位にしておきましょう。とりあえずテストしましょう。その方がMEGが解りやすいと思いますし・・・。」 『了解、キチンとデータとってくれよフレデリカ。こう言う面白いシステムは大好きだからな、俺は』 「YES MY MASTER(了解です、親方様)」 そう言うと本格に機体に火を入れ、稼動状態にする。 『イソロク、出るぜ!』 そう言うとイソロクを乗せた鋼鉄の巨人・・・WAPは訓練施設に向かって歩き出した・・・。